「インサート」と呼ばれる二つの異なる部品
カプセル内部のインサートは、保護ホルダーの中でコインを中央に保持します。一方、木製ケースのインサートは、ホルダー全体を支えます。どちらもフォームインサートと呼ばれることがありますが、寸法や接触面は異なります。
依頼書には、例えば「購入者支給の密閉カプセルを収める外装展示ケース用インサート」と、対象を明記してください。カプセルの供給者と、コインをカプセルに入れる担当者も示します。これが曖昧だと、供給者はホルダー選定済みとして見積もり、購入者はホルダー選定も含まれると考えるおそれがあります。
既存の収集用コインは、展示レイアウトに合わせるためだけに元のホルダーから取り出さないでください。 米国造幣局のコイン取扱いガイド では、現代のコインやセットは元のケースやカプセルを保管するよう勧め、密封された鑑定済みコイン用ホルダーをスラブと説明しています。付属書類の保管も推奨しています。残すべき保護構成を維持できるよう、外側の展示ケースを設計してください。
ホルダーの形式からインサートを選ぶ
最初に比較すべきなのはベルベットとフォームではありません。インサートが何に触れるか、受取人が何を見て、どこを持ち上げる必要があるかを確認します。
| 展示する収納物 | 仕様決定の出発点 | 承認時の重点確認 |
|---|---|---|
| 密閉した円形カプセル | 実際の外径、閉じた状態の厚さ、縁の形状 | 安定した収まりとカプセル全体を持ち上げるためのアクセス |
| 長方形の鑑定ホルダー・スラブ | 外形全体、角部、厚さ、ラベル位置 | 識別表示を隠さずにホルダーを取り出せること |
| 裸のメダル・チャレンジコイン | 実際の外形、浮き彫り、仕上げ、承認済みの接触要件 | 適切な接触面と合意した取扱い方法 |
円形カプセルでは、透明な縁が内部の金属コインより外側に張り出している場合があります。スラブの長方形収納部は、見えているコインの円形ではなく、ホルダー全体に対応させます。保持部で、購入者が読みたいラベルを隠さないようにしてください。
裸のメダルは別途検討が必要です。密閉ホルダーの下で見栄えのよい装飾布でも、保護されていない金属への直接接触にそのまま承認することはできません。歴史的価値があるもの、繊細なもの、保存を目的とするものは、展示素材を選ぶ前に専門家の要件を確認してください。
混在するコレクションには、一枚のトレーに異なる収納部を設けられます。例えば円形カプセルと長方形スラブには、それぞれ承認された支持形状が必要です。すべての開口を最大のホルダーに合わせて広げると、小さいものの収まりが変わってしまいます。
コインの呼び径ではなく、完成したホルダーを指定する
ホルダーの品番、図面、代表的な密閉サンプルを入手します。収納可能なコイン寸法だけでなく、実際に梱包する組立状態の寸法を記録してください。
円形ホルダーでは、内部のコイン収納寸法と外径を区別します。長方形ホルダーでは、長さ、幅、厚さ、突出部を記録します。どちらの面を上にするか、開封時の向きが重要かも明記してください。
カプセルを閉じた状態の厚さも重要です。幅が合っていても、ふたの下で高すぎる場合があります。逆に深すぎる収納部では、つかむ部分が隠れて取り出しにくくなります。
図面では次の三点を分けて示します。
- ホルダーを支える面。
- 仕上がり後の収納部の外形と深さ。
- 取り出しに必要な空間と動作。
求める結果を説明せずに「ぴったり」と指定しないでください。購入者は展示中に目立つ動きがないことを意図し、供給者は圧入に近い嵌合と解釈するかもしれません。両者は別の要件です。完成素材を用いた挿入・取り出し確認を合意してください。
ここでは一律のクリアランスを示しません。硬質の収納部と、布で覆われた圧縮性のあるインサートでは設計上の考慮が異なります。余裕寸法は承認済みホルダーと完成構造に基づいて決め、一般的な割合やカプセル径からの任意の差し引きで決めないでください。
安定性、見やすさ、取り出しやすさを両立する

収納部と指掛かりの選択肢を示す概念図です。寸法図や試験済みサンプルではありません。
収納部には適切な外形だけでなく、ホルダーの支持位置、見える範囲、受取人が持ち上げる方法の確認が必要です。
浅い収納部はカプセルを見せやすい一方、意図した保持方法が必要です。深い収納部では縁が隠れることがあります。指掛かりや引き上げタブは、取り出しに役立つ場合に検討できますが、装飾として加えるだけでなく、実際のホルダーで確認してください。
カプセルの開閉の継ぎ目を引っ張らず、閉じたまま全体を持ち上げられるか試します。スラブでは、ラベル窓を押したり角をこじったりしないとつかめない設計になっていないか確認します。通常の取り出しに工具が必要だったり、ホルダーが開くおそれがあったりする場合は、設計を見直してください。
コレクションの「高さをそろえる」が何を意味するかも決めます。ホルダーの厚さが異なると、収納部の深さを同じにしても展示高さはそろいません。すべて同じ深さを求めるのではなく、目指す見え方をサンプル仕様書に示してください。
すべてのホルダーを入れてふたを閉じます。ふた内張り、証明書ポケット、留め具との関係を確認してください。ふたが閉じるだけで十分な隙間があるとは限らず、柔らかい内張りが干渉をすべて吸収できるとも限りません。
支持素材と接触層を分けて確認する
「ベルベットインサート」は外観の説明であり、構造上の重要な点は未確定です。布の下の支持材、被覆の固定方法、ホルダーに触れる面を確認してください。
XRXではEVA、スポンジ、ベルベット内張りなどを選択できます。EVAはエチレン酢酸ビニル共重合体です。これらは案件開発の選択肢であり、コイン保存に共通して適用できる仕様ではありません。収納物に合わせて実際の素材、被覆、構造を確認します。
製造面では、完成した組立状態で一体として承認する必要があります。被覆前の収納部を承認した後に布を加えると、有効開口や縁の仕上がりが変わる場合があります。同様に、外箱の色の承認は、ホルダーの下に隠れる接触素材の承認にはなりません。
ロゴとインサートのカスタマイズ を通じて、支持材、被覆、ブランド表現、木製構造を調整できます。外装にはMDF、突板、無垢材を検討できますが、素材名だけで適切な内寸は決まりません。
保存上の配慮が必要な案件では、「PVCフリー」「無酸性」「高級ベルベット」といった表示だけに頼らず、文書による素材評価を求めてください。カナダ保存研究所の 金属コレクションに関するガイド は、布、接着剤、塗装、その他の収納素材の評価を求めています。また、一般的な塗料やニスは通常、木材からの放散物を遮断する有効な障壁にはならないと注意しています。装飾仕上げだけでは、保存に適した遮断性能の証拠になりません。
各収納部にホルダーの識別情報を割り当てる

異なる形式のホルダーを組み合わせた概念図です。ホルダー形状、カード位置、トレー構造は案件ごとに確認が必要です。
複数枚のコインを収める案件では、図面に簡単な収納部一覧を添付します。「各種コイン三枚」といった曖昧な説明ではなく、並び順と実際の部品を対応させられます。
以下は仕様記載の例であり、標準レイアウトではありません。
| 図面上の位置 | 承認済み収納物の識別情報 | その位置での確認事項 |
|---|---|---|
| A | 円形カプセル、品番A、現行改訂版 | カプセル全体が合意どおりに収まり、取り出せること |
| B | 円形カプセル、品番B、現行改訂版 | 展示高さが承認済みの見え方に合うこと |
| C | 長方形ホルダー、品番C、現行改訂版 | ラベルが見え、角部にアクセスできること |
| 書類用スペース | 購入者支給カード、現行改訂版 | ホルダーに荷重をかけず、カードを別に収められること |
それぞれの識別情報に対応するホルダーの図面とサンプルを添付します。二つの位置で全く同じホルダーを使う場合は明記してください。コインの呼び径が同じだけで、収納部も同じと判断しないでください。
取り外し式トレーでは、装飾用インサートパネルと、収納物を載せたまま持ち上げる構造を区別します。支持方法と取り外し方を確認してください。使い方を検討せず、固定されていないフォームパネルを荷重を支えるトレーとして扱わないでください。
証明書を、開封直後、トレーを持ち上げた後、またはコイン展示とは別に見せるのか決めます。専用のカード収納部を設けると、その順序を整理できます。実際のカードの寸法と厚さを使い、一般的な証明書サイズを想定しないでください。
次回の商品で既存レイアウトを再利用する前に、ホルダーの識別情報を確認します。見た目にはコインの図柄しか変わっていなくても、カプセル供給者、閉じた状態の厚さ、スラブ外形の変更により、インサートの改訂が必要になる場合があります。
適合性と保存性能を混同せずにサンプルを承認する
代表的なホルダーを使い、完成したサンプルを評価します。価値の高い収納物が関係する場合は、購入者と相談し、価値のない代替サンプルや承認済みダミーを用意してください。収集用コインを使って独自に試験しないでください。
実務的な確認は次の順で行えます。
- 特定: 各ホルダーが、収納部に割り当てられた識別情報と一致するか確認します。
- 収納: 無理に押し込まず、閉じたホルダーを完成した収納部に収めます。
- 表示: コイン面、ラベル、想定したコレクションの順序が見えるか確認します。
- 取り出し: 合意した動作で各ホルダーを取り出して戻し、引っ掛かりや開閉部の変化を記録します。
- 閉蓋: 収納物と書類をすべて入れ、ふたとの隙間を確認します。
- 記録: 承認した配置を撮影し、ホルダー、インサート、図面の改訂番号を記録します。
繰り返し取扱う確認を行う場合は、許容できない動きや目に見える跡の基準も含め、供給者と合意します。承認書を技術的に見せるためだけに、根拠のない回数を加えないでください。
輸送は別途確認します。木製ケースは収納物を入れたまま発送するのか、受取人が後からホルダーを入れるのかを決めます。卓上での適合確認だけでは、流通用梱包全体の妥当性は確認できません。
長期保存はさらに別の問題です。カナダ保存研究所の コインとメダルの取扱い資料 は、木製保管キャビネットを推奨せず、木製展示ケースから金属に有害な酸性蒸気が放散する場合があると注意しています。カプセルに入れるだけで、どの木製容器も無期限の保存に適するとは考えないでください。保存が要件となる場合は、資格・専門性を持つ保存修復の専門家に構成を指定してもらいます。外観サンプルでは、長期保存性能や変色防止性能を証明できません。
よくあるご質問
カプセル内のインサートと木製コインケースのインサートは同じですか?
いいえ。カプセル内部のインサートはホルダー内でコインを支えます。木製ケースのインサートはホルダー全体を支え、裸の収納物は直接接触の要件を別途合意した場合に限り対象とします。
収納部はコインの直径に合わせるべきですか?
カプセル入りのコインでは、直径だけでなく、承認済みカプセルの外形と閉じた状態の厚さを使います。代表的なサンプルで、完成した収納部と取り出し方法を確認してください。
一枚のトレーにカプセルと鑑定スラブを収められますか?
はい。承認済みの各ホルダーに独立した収納部を設けられます。互換性があると想定せず、それぞれの外形、ラベル位置、展示高さ、取り出し動作を確認してください。
フォームインサートはきついほどよいのですか?
いいえ。保持力と挿入・取り出しやすさの両立が必要です。実際の支持材と被覆を確認し、無理な力が必要なものや、ホルダーの開放・損傷につながるものは承認しないでください。
ベルベット内張りの木製ケースは変色を防ぎますか?
それだけでは防げません。ベルベットは内張りの説明であり、容器全体の保存性能を示しません。素材の適合性と保管条件は別途評価する必要があり、美しいサンプルは変色防止の保証にはなりません。
翌年の商品にインサートを再利用できますか?
承認済みホルダーとレイアウトが引き続き一致することを確認した場合に限ります。カプセル寸法、スラブ外形、閉じた状態の厚さ、書類配置が変わった場合は、再利用前に適合性を再確認してください。
ケースの見積もり前にインサートの仕様書を整える
ホルダーの識別情報、収納部一覧、取扱い手順、仕上げの方向性、数量、梱包計画をまとめます。保存要件がある場合は、「コレクター向け」という言葉から供給者に推測させず、明記してください。
記念コイン製品のコンセプト で展示の方向性を確認し、 コインケース用インサートの仕様をXRXへお送りください 。構造やサンプル製作についてご相談いただけます。出発点は一律の穴寸法ではなく、承認済みホルダーと、インサートが果たすべき役割です。